水溶性フラックス残渣

水溶性フラックス残渣

サマリー

・水溶性フラックスは、残渣に吸湿性があるため、洗浄が必須である。
・半導体の分野では、基板の高密度化やDIEの大型化に伴い、水のみで洗浄できない事例が増えてきている。
・洗浄装置の最適化や、水溶性フラックス洗浄剤(パインアルファST-230R)の使用が、残渣の除去に効果的である。

水溶性フラックスの特徴

製造メーカーにより多少の違いはありますが、一般的に水溶性フラックスはPEG(ポリエチレングリコール)等の水溶性成分で構成されています。したがって、水溶性フラックスは水で洗浄することが可能です。ロジン系フラックスの中には、はんだ実装後に洗浄不要なものもありますが、水溶性フラックスは、はんだ実装後の残渣に吸湿性があり、腐食や導電の恐れがあるため、洗浄が必須となります。
水溶性フラックス ロジン系フラックス
洗浄の必要性 必須 不要な場合もある
洗浄剤 水でも可能 パインアルファなど専用の洗浄剤
(※水溶性フラックスによる腐食やハンダ痩せについては、こちらもご参照ください。)

水溶性フラックスの問題点

・パッケージ基板の難洗浄化
半導体パッケージには水溶性フラックスが使用されていますが、基板(サブストレート)の高密度化やチップ(DIE)の大型化により、水のみでは洗浄できない事例が増えてきています。基板とチップの隙間(Bump Gap)やバンプピッチ(Bump Pitch)が狭くなるほど(狭ギャップ化)、またチップの面積が大きくなるほど(大面積化)、隙間内部に液が浸透し難くなり、洗浄に時間を要したり、洗浄自体が不可能になったりすることがあります。
・フラックス残渣の難洗浄化
半導体製造技術の高度化に伴う水溶性フラックス成分の改良や、リフロー条件の変更(高温化、長時間化)により、フラックスそのものが難洗浄化することや、水に溶けないはんだ金属塩(スズ塩等)が生成し、洗浄不良を引き起こすことがあります。また最近では、ロジンなどの非水溶性物質を含む水溶性フラックス※も市場に投入され始めています。この様なフラックスは、残渣が基板表面にあれば、高圧シャワー等で分散除去することが可能ですが、残渣が隙間内にあれば、水のみでの洗浄は極めて難しくなります。したがって、準水系洗浄剤や強アルカリ性の洗浄剤などが必須となります。なお、強アルカリ性の洗浄剤を使用する場合は、はんだ金属の腐食にも注意を払う必要があります。
(※製品SDSの組成情報の項目にロジン類が記載されている水溶性フラックス)

解決策

・洗浄装置の最適化により、隙間洗浄性を向上させる

洗浄装置面での解決策としては、高圧シャワーにより隙間内へ液を浸透させ、その液流で内部を洗浄する方法や、洗浄チャンバー内でワークを液に浸し、減圧して隙間内の気泡を取り除いたうえで、超音波洗浄等を行う方法(減圧洗浄)などが効果的です。ただし、後者はラボ検討や試作製造などの少量生産向けであり、工場で大量生産を行う場合は前者のシャワー洗浄が最適です。最近では、従来のベルト搬送等によるインラインシャワー洗浄装置に加え、シャワーノズルや洗浄ステージをフレキシブルに移動させ、常にチップ裏の隙間を狙ってシャワーを当てる洗浄装置もあります。

 

・水溶性フラックス洗浄剤(パインアルファST-230R)を使用する

フラックス由来の難洗浄成分やリフロー時に生成するはんだ金属塩などを水だけで除去するには限界があるため、それらの溶解に特化した洗浄剤を使用することが最も効果的です。荒川化学のパインアルファST-230Rは、狭隙間内の水溶性フラックス洗浄用に開発した洗浄剤です。一般的な水溶性フラックスに加え、ロジン入りの水溶性フラックスをはんだ金属等の腐食無く洗浄することが可能であり、コスト、安全性にも優れています。

 

[パインアルファST-230Rの特徴]

コスト:水で10~20倍希釈して使用、廃水負荷も低減
安全性:弱アルカリ性タイプpH10.7(10倍希釈品)
腐食性:アルミ、銅、はんだ金属(SAC)対する腐食、変色無し
洗浄装置:シャワー、超音波、液中JET、ダイレクトパス等、各種洗浄方式に対応

 
[使用例]

 

[洗浄性評価結果]

・フラックス洗浄性評価(シャワー洗浄)

水溶性フラックス:千住金属製WF-6317およびWF-6450、Alpha製WS-698(ロジン含有)、当社製WSP-015R-6
テスト基板:ソルダーレジスト開口80μm、バンプピッチ180μm、バンプ高さ35μm、バンプエリア50×40mm

各フラックスをバンプ面全体に約45mg塗布し、240℃90秒加熱、50×40mmのガラス板を載せ、四隅を接着剤で固定した(写真参照)。
洗浄実験:写真赤線部分にシャワー噴流を当てる、基板の搬送なし、洗浄剤温度70℃、シャワー圧0.3MPa

フラックスが溶解するまでの時間を比較した。

 

結果:いずれのフラックスに対しても、パインアルファST-230Rが最も高い洗浄性を示した。

 

・金属の腐食評価
試験方法:70℃のST-230R(10%水溶液)に各種金属試験板を20分浸漬し、金属表面の状態を確認した。

結果:浸漬20分後でも腐食せず、金属表面に変化なし

 

・はんだの腐食評価
試験方法:70℃の各洗浄剤にはんだ(SAC305)付きテスト基板を浸漬し、はんだ表面の状態を確認した。

結果:[ST-230R]浸漬40分後でも腐食せず、はんだ表面に変化なし
[他社品]浸漬10分で完全に腐食し、はんだ表面の金属光沢が消失

 

パインアルファST-230Rは、短時間で狭隙間内の水溶性フラックスを洗浄することが可能であり、はんだの腐食も発生しなかった。一方、他社品で洗浄した場合は、フラックス残渣やはんだ金属の腐食が発生した。また、水のみで洗浄可能な水溶性フラックスであっても、ST-230Rを使用することにより洗浄時間の短縮が可能であった。

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